■ ルーツは何と商(殷)の時代
ハサミと小刀のみを使って制作される中国の切り絵は「剪紙(せんし)」と呼ばれ、民間、特に農村に長く伝承されてきました。
その起源は遥か昔の商の時代(紀元前16〜11世紀)にまで遡ると言われています。
一説には南北朝時代(420〜581年)とも言われていますが、いずれにしても悠久の歴史を持つアートといって差し支えないでしょう。
唐代(618−907)になって、紙を花貼に剪んで顔の飾りにするようになり、宋代(960−1279)になると剪紙花様を門に貼り付けるようになりました。
ちなみに紙が発明される以前は、木の葉や皮、金属片などを素材にしていたようです。
■ 切り絵のデザインに見る地域特性
切り絵文化は、中国全土及びその周辺地域に広く分布しています。
一般的に北方の切り絵は素朴にして雄健、
南方のものは繊細優美と評されます。
地域により、デザインや色彩、製法に大きな違いがあるのも、
切り絵を見る楽しさの一つです。
■ 吉祥や瑞兆を現す図案
切り絵のモチーフにされるのは主に動物ですが、神話、民間伝説、歴史物語、虫草、花鳥など、様々なものが題材とされます。
題材は違っても吉祥や瑞兆を表現した図案であることは共通しています。これは身近なものへの愛情と、繁栄を願う心の現われなのです。
またその物の特徴をしっかり押さえながらも、
極限までシンプルに表した技法は、秀逸の一言です。
■ 農村で受け継がれる切り絵文化
切り絵の作者は名もない一般民衆で,多くは農家の婦女子です。
それゆえ,切り絵には彼らの希望、理想や自然に対する感性が見られます。
字が読めない彼らは、その地方に伝わる切り絵のデザインを、親から子、子から孫と引継いできました。
基本デザインの中には商(殷)の青銅器の文様を思わせるデザインも多く、太古からの伝承が今も変わらず生活の中に生きている事を感じさせます。
■ 楽しみ方色々、身近な伝統文化
悠久の歴史が育んだ豊かさ、広大な大陸がもたらした多様性、そして抽象化された秀逸なデザインで、切り絵は歴史に残る芸術と言えるでしょう。
一般的な中国の家庭では、窓ガラスや家具などに糊で直接貼り付けますが、手に入りづらい日本では少々リスキーかもしれません。やはり色に合ったシンプルな額に入れて飾るのがお勧めです。
また切り絵は、パウチで枝折に加工したり、下敷きにしたりと、様々な楽しみ方ができることも大きな特徴です。
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